関西医大「国際交流」創刊号2014にMr Darcyの寄稿文が掲載

2014年04月08日

今般、関西医科大学より国際交流創刊号を友好協会宛送付いただきましたが、その中に、之までにたびたび紹介してきました(当協会の人材育成事業の一環として)右大学に医学研究生として留学してきましたソロモン諸島保健省のMr Darcyの寄稿文(英文)が掲載されました。ソロモン諸島の紹介と衛生問題について興味深い内容が書かれていますので、訳文を付して掲載・紹介いたします。
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(仮訳)日本の大学―予防衛生学の面でのグローバルかつ潜在的パートナー
公衆衛生学研究室 研究生;アンドリュー ワレルマ ダーシー(2013)

ソロモン諸島において生まれる子供の成長過程において、自分が絶えず直面している問題は、如何に子供の生存を維持しうるかという問題に対する「挑戦」である。南西太平洋に2列に並ぶ群島、ソロモン諸島における幼児死亡率は、2010年統計によれば、1000人中30人という割合である。

ソロモン諸島は約900の島々から構成されており、陸地面積は総計28785キロ平方メートルになるが、これら多くの島々で生活する人々の命にかかわる農業振興は、高低差の激しい火山帯に属する山々或いは低い地域に広がる沼地またはサンゴ環礁という自然環境の中では容易ではない。

人口52万人という数は、太平洋島嶼国の中では3番目に多い数である。ソロモン諸島の部族構成は、人口の95%がメラネシア系で、他はポリネシア系とミクロネシア系とその他の外国人からなっている。言語に関して言えば、異なった島々では、120言語或いは方言がそれぞれ使われているため部族間コミュニケーションが難しい。そのためソロモン諸島は、英語を公用語としつつも部族間の共通語として「ソロモンピジン」と言う混合英語を採用している。

ソロモン諸島のように熱帯に位置する国は、蚊の繁殖には格好の地域と言える。この国に発生するマラリアはまさに風土病であり、公衆衛生上の主要なテーマである。もう一つの重要な国民的問題は、2013年に7人の死者を出し数千の人々が患ったデング熱である。このような病気が急激に発生した場合に必要なことは、直ちに行動に移れる早期警戒システムを備えた監視体制があり、その下で直ちに行動に移れることである。2013年に発生したデング熱に見られるように、ソロモン諸島を含め多くの小国が抱える人材と対応システムでは、デング熱が発生するとその最初の週に直ちに蔓延してしまう。したがって、必要なことは、日頃の研究を通じて検証を行いうる監視システムを機能させることであり、このようなシステムが充実すれば、予期しない事態に対応できる自信を助成することになろう。   

2013年に発生したデング熱の場合には、太平洋公衆衛生監視ネットワーク PPHSN(Pacific Health Surveillance Network)が対応した。この組織は、太平洋島嶼国、当該地域における学術団体とその技術支援チームから構成されており、PACENT, LABNET, EPNETと言う3部局が、協調体制の下、情報提供から検証そして実際の行動を採った。しかし、この組織が示した全面的な努力にもかかわらず、広い島嶼地域に拡散している少ない人口資源のため、斬新な組織ではあるが、その活動に遅れが見られ十分な活躍が行われているとは言いがたい。

現在、私は、関西医科大学の公衆衛生学研究室においてデング熱研究チームの一員として、
貧弱な研究施設しかないソロモン諸島における研究施設整備の可能性を探るための訓練計画のもとで研究を進めている。しかしながらこの研究はソロモン諸島を助けるための第一歩に過ぎず、将来にわたり継続的な技術支援と指導が必要とされる分野である。その意味において日本の大学は、訓練施設内において可能な限りの研究資源に触れる機会を元学生であった者にも与えてくれる斬新な機会を提供してくれ、その上ソロモン諸島の国家的政策に役立つ最新の技術習得ならびにそのための研究に必要な種々のアドバイスも提供してくれている。

最期に、かかる研究の機会を私に与えてくれている関西医科大学に感謝すると共に、今後とも長期にわたり協力指導をお願いできれば幸いである。